2021年2月20日土曜日

実務補習所短縮申請について

補習所短縮申請について、ツイッターでアドバイスいただいたり金融庁、財務局に問い合わせた内容をまとめました。

補習所短縮とは?

手順を書く前に短縮申請の背景を書いておきます。ちょっと長くなりますが、手続きを理解するうえで参考になるかと。

公認会計士論文式試験を合格しただけでは公認会計士になることはできません。
公認会計士として登録するには、以下の3要件をすべて満たす必要があります(公認会計士法第3条、第17条、第18条)。
  1. 公認会計士試験に合格した者(免除された者を含む)であること
  2. 実務経験(業務補助等)の期間が2年以上ある者であること
  3. 実務補習を修了し、内閣総理大臣の確認を受けた者であること
3が今回の補習所の話になります。

補習所は通常は3年間通うことになります。3年間のカリキュラムをこなして単位を取り終わると修了考査を受けることができ、それに合格すると3の要件が達成されます。
補習所ではそれぞれの学年で受けることができるカリキュラムは決まっていて、通常1年目のJ1ではJ1の講義しか受けることができません。
ほとんどの合格者は実務未経験になると思うので、補習所に3年間通いながら2の実務経験をクリアしていくのですが、補習所に入所した時点で上記の2の要件を満たしていればカリキュラムを圧縮して1年で3年分(3→1短縮)、または2年目に残りの2年分(3→2短縮)のカリキュラムを圧縮して受講することができます。

最終的に短縮が認められるには2の要件を満たしたこと(金融庁の受理番号の発行)を会計教育研修機構(実務補習所)が確認する必要があります。

例年であれば11月に合格発表があり、12月から補習所が始まるけど、2の書類の作成と審査には2~3か月くらいかかるので金融庁への2の手続きが進んでいることを確認して見切りで短縮が仮承認されます。仮承認のままJ2やJ3のカリキュラムをこなしていっているうちに、2の申請が受理された書面が届くので、これのコピーを補習所に提出して手続きが完了します。

以上のように、短縮が認められるためには金融庁に提出する資料の受理が前提になっている関係で手続きがちょっと複雑です。
金融庁に提出する資料と実務補習所に提出する資料がそれぞれ様式が異なっていて別々に提出することになります。
基本的に同時並行で準備を進めることになりますが、金融庁に提出する資料が重たいのでなるべく早めに着手するとよいです。

金融庁への書類の提出

金融庁のHPに手続きが書いてあります。
最終的には以下の書類を提出することになります。
  1. 業務補助等報告書
  2. 業務補助等証明書
  3. 従事していた法人等がわかる資料
  4. 直接担当していたことが確認できる資料
  5. 返信用封筒
  6. その他
1と2は本文は同じものです。
内容のすり合わせがあるので、最初はドラフト版を書いて財務局に提出します。ドラフト版は財務局のご担当者がレビューをしてくれるのでこれを反映して再提出というのを2,3回くらい繰り返して最終版を作ります。これの作成がかなり重たいです。
1は書いてそのまま印刷して送ればいいですが、2は従事していた法人等に押印してもらう必要があります。ここの押印は会社の代表印(社長印)が必要です。事業部印とかではダメです。ドラフト版は押印なしでよいので最終版が確定してから押印もらいましょう。
資本金5億円以上の会社ともなると内規で分掌が進んでるから社長印もらうのはけっこう大変だと思います。
3は所属している(いた)会社のホームページなどから会社概要や組織図で自分が所属していた部署などがわかる資料を提出します。
4は具体的に自分が作った資料などを添付しますが、情報管理の点などから提出できないなどの場合は提出が免除されます。自分の場合はすでに退職していた会社だったのでそういう事情もあって提出免除されました。
6については、勤務形態が非常勤などの場合に労働時間が確認できる書類の提出が必要になったりするようです。
これ以外にも提出を求められる場合もあるかもしれないので、詳しくはドラフト版提出時に財務局のご担当者とやり取りするときに聞くのがよいかと思います。

金融庁が審査する書類ですが、提出は財務局になります。たぶん提出は通年受け付けていると思います。こちらのPDFから送付先を確認できます。電話番号も書いてあるので、早めに連絡してドラフト版の提出方法などをすり合わせておいた方がよいかと思います。
最終版を提出後、1か月くらいで「業務補助等報告書の受理について」という受理番号が書かれた書類が届きます。この書類は公認会計士登録時に使うそうなので大事に取っておきます。
これのコピーを補習所に提出することで最終的に短縮が認められることになります。

実務補習所に提出する資料

会計教育研修機構(JFAEL)に手続きが書いてありますが。
  1. 修業年限短縮申請書(第2号様式)
  2. 業務補助等の概要(第3号様式)
  3. 勤務証明書又は在職証明書
  4. 金融庁に提出する「業務補助等報告書」と「業務補助等証明書」のコピー(ドラフト版でよい)
1と2については様式があるのでそれに書けばよいです。
3は自由様式なので、自分で作る必要があります。3にも所属している(いた)会社に押印してもらう必要がありますが、こちらは代表印(社長印)じゃなくてもOKです。事業部長印とかでも受理してもらえます。
4は前述の資料のコピーです。ドラフト版で大丈夫です。
先に金融庁の審査が終わってて受理番号が取れていれば3と4は必要ないような気がします。そういう人は補習所に聞いてみてください。
提出先は会計教育研修機構で、こちらは申請期間が決まっていて、毎年12月1日~1月15日までです。期間が短いので要注意です。

最後に

金融庁(財務局)も補習所もそれぞれ自分のところで受理する資料以外のことは基本的には教えてくれないと思った方がよいです。(補習所のほうが多少柔軟に教えてくれます)
例年では合格発表から補習所の講義が始まるまでが短いので、短縮申請を急ぐ必要がありましたが、2020年は試験が延期になった影響で3→1短縮ができなくなっているので次の12月で3→2短縮申請するためにゆっくり準備を進められると思います。まずは金融庁に提出する資料の準備を進めるのがよいかと思います。

3→1短縮できないのは残念ですが、今回のスケジュール感で3→1短縮した場合はカリキュラムの消化が相当厳しかったんじゃないかと思います。3→1短縮の講義スケジュールはかなりギュウギュウに詰め込まれているので、スタートが3月にずれ込んだら1年で3年分のカリキュラムの消化するのは絶望的だったんじゃないかと思います。
むしろ3→2短縮になったことで、1年目のJ1では全体の7割に相当する大量のカリキュラム消化に専念できますし、2年目で残りのJ2,J3のカリキュラムをゆっくり消化しながら修了考査対策も余裕をもってできるかと思います。特に2年目は税務考査(法人税)があるので、税務考査の勢いで修了考査の税務実務の学習を進められるのは大きなメリットになると思います。通常はJ2で税務考査を受けた後、1年空いてJ3の税務実務の学習を再開することになります。

2021年実務補習規定の改訂

2021年7月に実務補習の規定が改訂されたのでポイントの紹介です。 主な変更点は講義や単位の取り方の変更なので、課題研究や考査への影響はなさそうです。 2021年入所から適用されるので、 2020年期までに入所している人には適用されません 。 ライブ講義・eラーニングの区別がなく...